朽ちてゆく大切な思い出
常用パソコンが寝てしまい。
古~いヤツを引っ張り出してきて既に一ヶ月以上が経ちました。
初めは余りの遅さに愕然として、イライラしましたが、もう慣れました。
それよりも・・・
コイツの中に眠っていた膨大な写真データに、驚きと、嬉しさと・・・。
コイツは超優秀な、過去行き一方通行のタイムマシーンです。
夜な夜な、色々な思い出へと誘ってくれます。
私の妻の実家は山際の田舎です。
そこから奥は道が無くなるような、そんな場所。
玄関を入ると笏谷石が敷かれた土間があって、
二十畳以上はあろうか、大きな板の間に囲炉裏。
上を見上げると煙出しの明かり。
家の中央には大黒柱を田の字型に囲んだ大きな部屋が四つ。
その周囲には縁側、居間、台所、風呂、厠等。
蔵、離れ、中庭の池。
一辺が一尺以上はゆうにある立派なケヤキの柱に梁。
雪国の積雪にもびくともしない。
大きな、漆塗りの建具。
居間や縁側から眺める中庭の池にはオニヤンマもやってくる。
それはもう、素敵な空間。
周囲の山道を散歩すると、四季折々の楽しみ。
花は、カタクリ、春蘭、ショウジョウバカマ、イカリソウ、早春から始まって次々と。
山菜や紅葉は勿論。
庭先には山からの水が年中サラサラと流れ、蛍も舞う。
玄関先でバーベキューをして・・・翌朝起きたら、残り物を沢蟹がつついていた。
夏の夕暮れに、庭や縁側で涼んでいると、
なんとも上手にヒグラシが鳴いて和ませてくれる。
畑を手伝った思い出。
雪下ろしを手伝った思い出。
私も子供も大好きな場所。
そんな家でした。
既に御高齢な御両親。
年寄りにこんな家は冬に辛いからと、冬の寒さが嫌だからと、
今風の家を買って引っ越してしまいました。
大好きなあの家は、今は単なる納屋。
農作業の折に時々寄るだけだそうです。
先日、トイレを使おうと思って入ったら、
床から何からカビだらけで、靴のまま上がったそうです。
どんなに立派な家でも、
主を失ってしまうと、あっという間に痛んで、
朽ちていってしまう。
私に経済的な余裕でもあれば、大切に残したい。
そんな思いはあります。
子供の転校など、ややこしい問題が無ければ、
私の家族が住んだっていいのに。
でも、
現実は、どうにもしがたく。
とても寂しい。
やるせないのです。
そんな田舎の現状が、
きっと、日本中にあるのでしょうね。
思い出に浸っていたら、
寂しい夜になってしまいました。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
う~ん、とても素晴らしい建造物なのに、
もったいないというか、残念ですねぇ~
じゃあ、自分がいざ住むとなると、
「オール電化?水洗トイレ??エアコンは??」ってな感じで、
昨今の利便性を求めてしまうんでしょうネ
都会暮らしがイヤになった方が、
こういった田舎の物件を探す専用サイトもあるくらいですから、
そういった需要者にしてみれば、
これは垂涎の物件なんでしょうネ
投稿: フレディ・M | 2010年11月25日 (木) 07時46分
フレディ・Mさん、どうもぉ。
そうなんですよね。^^;
いざ住むとなると、やっぱり不便が多いんでしょうね。
夏は涼しくてエアコン要らずなんですが、
冬は・・・。
囲炉裏端でも、寒いのは寒い。
それでも、
実情を知ってか知らずか、田舎家に憧れる都会人は多いでしょうね。
色々と農機具?等あるからか、積極的に売る気もないようですが、
今のままでは痛むばかりで・・・。
残念ですねぇ。
投稿: Fumi | 2010年11月25日 (木) 12時48分
こんばんはぁ。
そうですね、昔の日本人は冬は寒いものだと思って家の中で
じっと冬をやり過ごし、春の来るのをひたすら待ちこがれて
いたんですね。
僕の時代も暖房器具と言えば、火鉢か炬燵しか有りませんでした。
いろりなんてそれよりもずっと上等なものだったと思います。
あの薪が燻る独特の香りは今でも鼻の奥に残っています。
人は一度覚えてしまった便利さ、快適さは手放すことが出来
無くなってしまいますね。
良く言われることですが、便利なものと引き替えに大切な
ものをどんどん無くしてしまっています。
大切な奥様のご実家、どうにかして後世に残してゆきたいですね。
投稿: A-FOCUS | 2010年11月25日 (木) 21時38分
A-FOCUSさん、こんばんは。
火鉢か炬燵・・・(^^;)コタツが読めませんでしたぁ。
私が子供の頃は、暖房器具といえば
居間に石油ストーブが一つと、こたつ(笑)でしたね。
家族全員がこたつに足をつっこんで、
よく、脚で兄弟喧嘩をしました。^^
懐かしい。
今みたいに、個々に暖房器具を持つ時代ではないですから、
寒い季節は嫌でも家族全員が一緒に過ごしましたねぇ。
>便利なものと引き替えに・・・
個人が個人でどうにか出来てしまう世の中では、
人情は育ちにくいですよね。
どうにか・・・残って欲しいです。
投稿: Fumi | 2010年11月26日 (金) 00時56分